『カフネ』読みました。友達に「面白いから読んで!」と押しつけられましたが、味わい深くて最後までしっかり堪能できました。
『カフネ』はいわゆる「考えさせられる系の小説」です。
- 拒絶が必ずしも拒否とは限らない。
- 完璧にみえるあの人も痛みを抱えている。
- 時に強引に人を助けなければいけないときがある。
ストーリーを通じて、折り重なったメッセージを飲み込むのに、読んでは休み、読んでは休み。読み終える頃には「これからどう人を助けよう」と心に大きな問いを残してくれました。
文句なしで太鼓判を押せる小説です。
今回は『カフネ』のあらすじや感想をネタバレなしで伝えていきます。
『カフネ』のあらすじ
まずは、Amazonのあらすじの引用をごらんください。
一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
『カフネ』Amazonより引用
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。
法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
ざっくりいうと「死んだ弟の元恋人と家事代行サービスを通じて絆を紡いでいく話」です。
要約しちゃうと退屈そうですが、これが深いんだよなぁ。
- なぜ家事が大切なのか
- ゆとりとは何なのか
- 苦しみから立ち上がるには?
- 分かち合いとは?
ページを読み進めるにつれて、物語がそっと考えさせてくれる。そんな小説です。
『カフネ』の感想①繊細かつ的確なワードセンスに感動
阿部暁子さんの小説は初めて読んだんですけど、感情の届け方がずば抜けてました。
痛みや苦しみ、たぎるエネルギー、活力をここまで的確に言葉にできる作家さんは滅多にいないのでは?
ストーリーが面白い。メッセージ性に富んでいる。以上に、最後までのめり込ませてしまう繊細かつ的確なワードセンスがこの本の価値をさらに際立たせています。
『カフネ』の感想②拒絶は拒否なのか?救いについて考えさせられる
普段考えない問いを残してくれる小説は本当にありがたい。
この本にはいろいろ考えさせられました。その一つが救いについてです。ネタバレしたくないので深くは伝えられませんが…。
「差し出した手を拒絶されたら、その人に救いは必要ないのか?」
「助けるとはエゴなのか?」
「踏み込む勇気は自分にはあるのか?」
大切な人が苦しい時、自分は一歩踏み出せるのか。拒絶されてももう一度歩み寄れるのか。ストーリーの終わりに、「救い」について大きく考えさせられました。
「助けて」って言われるほど救いやすいものはない。
「助けて」と言われなくても、手は差し伸べられる。
でも、その手を拒絶されたら。自分はどう助けられるんだろう?
何度自問しても、「きっと自分は助けない。それだけの勇気はない」の答えに、「そんな自分でいいんだろうか」みたいなことを何度も問いかけました。
こうして、普段考えないことを考えさせられて本当にありがたいですね。
『カフネ』の感想③人の痛みを知れる。優しくなれる。
こういう痛み・苦しみにフォーカスされてる小説って好きなんですよね。
自分にはないコンプレックスとか、親のこととか、仕事のこととか。人の悩みを知るたびに、人への理解が深まるたびに、おおらかに人と向き合える気がしています。
この本も悩み苦しみ満載で、またひとつ世界が広がりました。そして、苦しみを知れば知るほど自分にもおおらかになれるのを感じてます。
みんな苦しい。完璧にみえるあの人も、全く想像もしないことで苦しんでる。
誰もが内側に悲しみを背負っている。
だから、時には自分も苦しんでいい。苦しんでいる自分をしっかり敬ってあげよう。
苦しみを描いた小説を読むたびに、自分を憐れむのではなく適切な自己愛という形で接することができるようになってきたと思います。
苦しい小説を2倍、3倍と楽しみたければ、『悲しみの力』を読んでみるといいかもしれません。
まとめ|『カフネ』は読むべき世界が広がる良書です。この美しさに触れてください。
ライトな本に飽きた方。そろそろ味わい深い本を読みたいなぁ。という方、ぜひお手に取ってください。中身に全く触れませんでしたが、普通に面白いですから笑。
ついでに、繊細な表現力に触れながら、「人助けとは何なのか」を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。
こういう「優しい」が核になってる小説をみんなが読んだら、もっと世界は平和になるんだろうなぁ。